明治のヒーロー発掘プロジェクト! from 山形庄内

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庄内のコワーキングスペースUNDERBARでは様々な人が集い、様々なプロジェクトが進行しています。今回はそんなプロジェクトの一つ、山本泰弘さんによる研究・執筆活動をご紹介。山本さんは公務員として働く傍ら、明治の歴史人物「植木枝盛」を題材とした原稿を書き上げ、現在出版社と交渉しているところです。それでは庄内から発信する「明治の歴史トーク」、お楽しみください。

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山本泰弘
山形県東根市出身。筑波大学国際総合学類、京都大学大学院地球環境学舎修士課程を経て、2013年、筑波大学「人間の安全保障」講座岩浅研究室アシスタント。2015年より地方公務員として勤務する傍ら、公共政策研究者として活動する。国会議員政策担当秘書資格保有。青年シンクタンクRHO主宰。

幕末のヒーロー・坂本龍馬。みなさんは、彼がその当時は全く無名のサムライで、歴史に名を残すはずではなかった――ということをご存じでしょうか。彼が死んでから約15年後、同郷のジャーナリスト・坂崎紫瀾がその活躍を過去から発掘し、新聞小説の形で世に発信したことで、龍馬という人物の存在が知られるようになったのです。それから数十年後の昭和の時代には、歴史作家・司馬遼太郎がその生き様を小説化し、龍馬は不動の人気を誇る英雄となりました。

僕が今ライフワークとして取り組んでいるのは、このように歴史に埋もれたヒーローを発掘し、現代の人々の目に映すことです。その人物とは、植木枝盛(うえき・えもり)。龍馬・坂崎と同じ土佐(高知県)に生まれ、国民のための政治を求めて立ち上がった自由民権運動のリーダーです。全く無名というわけではありませんが、日本史の資料集にちょっと登場する程度の存在。ですがこの男、そのような扱いにしておくにはもったいない、「実に面白い」人物なのです。

その男、イケメンにつき

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明治の人物ということで肖像写真が残っているわけですが、江口洋介似のイケメンです。武将、志士、さらには銘刀までがイケメンキャラとして描かれるこのご時世、明治にはまだ未開拓の人材が彼のみならず(※1)埋もれています。しかも植木は、少年期から驚異的な読書量や文章量を誇り、特待生扱いで入った学校を「天下という大学校に入り、英雄の大学問を修めようと考えた(現代語訳) 」と言って退学したり、「植木枝盛がいなければ、この世界は闇に支配されていただろう(現代語訳) 」と日記に書き残すなど、非常に中二病…いや、エキサイティングな生き様を演じています。

※1 著者の推しメンは、東北の自由民権運動のリーダー・河野広中、ジャーナリスト・思想家の徳富蘇峰。なお植木の盟友で坂本龍馬の甥の坂本南海男(直寛)という人物がおり、写真は残っていないが空想が捗る。

明治版池上彰&SEALDs

植木は、ごく少数の政治家が権力をほしいままにする明治政府に対し、国民参加型の政治を作ろうと立ち上がった人物です。全国各地から選ばれた国民の代表が集まって政策を決める国会を作るとか、国民の権利を保障する憲法を作ることを求める「自由民権運動」をリードした――というのが教科書的な説明です。

植木のユニークなところは、極めて格調高い政策提言書などを書く一方で、庶民に国民の権利や政治参加の意味をわかってもらうため落語のような文体の新聞記事を書いたり、リズムのよい歌やキャッチフレーズを流行らせたりしたことなんです。例えば、

「よしや南海 苦熱の地でも 粋な自由の 風が吹く」

声に出して読みたい日本語です。
当時は庶民が政治に参加するなど考えられず、字の読めない人も多かったため、わかりやすいしゃべりや歌で「自由とは、国とは、政治とはこういうもの」と広めていく必要がありました。
今の時代も、池上彰さんが政治経済をわかりやすくおもしろく解説したり、SEALDsが政治参加のかけ声を挙げたりしていますが、植木は130年以上前にその両方をやってのけていたのです!

“憲法書いてみた”

さらに、僕にとって植木の最大の推しポイントは、「独自の憲法草案を書いた」ことです。
近年日本社会では、憲法論議が熱を帯びています。国のポリシーである憲法を考えることは本来は創造的で魅力的なことですが、現代日本で憲法論議といえば、いまの憲法の文言や解釈を微修正するかしないかといったかなりマニアックなとらえ方しかされていません。それは実にもったいないと思うんです。

その点、憲法がまだ無かった時代に生きた植木は、「この国の掟を決めるのは俺だ!」と言わんばかりに独力で憲法草案を書き上げます。まさにロック(※2)ですね。しかしこの草案は現代にも通用するほど出来がいい。現に、今の憲法には植木の草案のDNAが受け継がれています。(※3)
「憲法書いてみた」という発想、斬新じゃないですか。「憲法はすでに与えられているもの」、「誰かエラい人が決めてくれるもの」との思い込みがある日本の世論に、植木のソウルをぶつけたいんです。

※2 “最高にロック!”の「ロック」と、政治哲学の偉人「ジョン・ロック」がかかっている。

※3 植木の憲法草案はその後明治政府により歴史から消されたが、戦前の時代、研究者鈴木安蔵により発掘された。終戦直後鈴木らは、植木のビジョンを取り入れた新たな日本の憲法案を提案し、それが影響を与えて現在の日本国憲法が作られた。

Co-working with 鴎外、紫瀾、枝盛…

ただ、約130年前の文書は現代人にはかなり難解ですから、僕が現代語訳と講釈を施しました。これは史上初の取り組みです。明治の青年の描く国のビジョンを、誰もが読めるのです。日本国憲法70周年を迎える今年から来年にかけては憲法論議がいっそう盛り上がります。その時代に植木が甦れば、「憲法は、国民が作るもの」ということに人々は気づき、「憲法には明治からのドラマがある」とのロマンにも目覚めることでしょう。
この文書は、日本社会を動かすポテンシャルを持っていますよ!

僕は現在公務員として勤めながら、出版に向け動いています。これはやはり明治の偉人である森鴎外のスタイルのリスペクトなんです。森鴎外も、軍医として勤めながら外国文学を翻訳したり歴史小説を書いたりしていました。

「埋もれていた人物を掘り起こす」というのは、龍馬を歴史の表舞台に出した坂崎紫瀾のリスペクトです。さらには昭和の時代に植木の存在を世に知らしめた鈴木安蔵、家永三郎という異端的研究者は、僕にとって大学の遠い先輩や師に当たります。そういった「レジェンド」たちとの時空を超えたコワーキング。職場でのキャラを脱し、研究者・著者としての自分であれるアンダーバーという場があるからこそ、それが実現できると思っています。
いかがでしたか?公務員という本業のみに留まらず、アンダーバーを活用して「研究者・著者としての自分」の研鑽を怠らない山本さん。アンダーバーでは「日経新聞を読む会」などのイベントも主催してくれたりしています。

「憲法を考えることは本来は創造的で魅力的なこと」。憲法についてそのように捉えたことはなかったので目から鱗でした。憲法改正あれこれの論議が出ていますが、「植木のソウル」を引き継いで、もう一度創造的な議論をしていくべき時代に来ているような気がします。”コワーカー山本泰弘さんと歴史談議・憲法談議をUNDERBARで”そんな一時も楽しそうですね。

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Yasuhiro Yamamoto

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山本 泰弘

山形県東根市出身。筑波大学国際総合学類、京都大学大学院地球環境学舎修士課程を経て、2013年、筑波大学「人間の安全保障」講座岩浅研究室アシスタント。2015年より地方公務員として勤務する傍ら、公共政策研究者として活動する。国会議員政策担当秘書資格保有。青年シンクタンクRHO主宰。

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