地方へUIターンをしようと思う人に考えてもらいたい「役割」と「居場所」のお話

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会社や組織の画一性が個人の可能性を制限しているのではないか。個人の「らしさ」を大切にし、可能性を最大化したい。アンダーバーの想いです。今回は、アンダーバーの利用者であり、最近新潟にUターンし、Ideapartners代表として新しい時代における「個人」や「地方」の可能性を追求する山本一輝さんにお話を伺いました。「サード・プレイス」「パラレルキャリア」という個人や社会の多様な豊かさを築いていくであろう考え方、是非ご一読ください。

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山本一輝(やまもと・かずき)
「Ideapartners」代表。1986年生まれ。新潟県新潟市出身。
小学校でいじめに遭い、中学校で3年間不登校を経験。その後定時制高校を経て大学へ進学し、教育心理学を専攻。卒業後、飲食業界で働くも東日本大震災を仙台で被災し、転職を決意。リクルートへ入社後、4年半東北にて大学・専門学校の広報や組織活性の支援、高校にて進路講演の講師を務める。仕事の傍ら、プロボノとしてまちづくり活動、高校生や大学生のキャリア支援などに広く携わった。現在は教育支援NPO「みらいずwork」に参画し、自らも企画団体「Ideapartners」を立ち上げ代表を務める。公私問わずこれまでの経験を生かして、生きにくさを感じる若者への支援や高校生のキャリア教育、地域の新たな価値創造に邁進している。

アンダーバーのドロップインの常連として、月1回程度、オープン当時から利用しています。それがご縁で今回も原稿を書かせてもらっています。これまでは仕事で仙台から東北公益文科大学に通っておりましたが、今はアンダーバーの皆さんとお会いするために酒田にお邪魔しています。当時から公私ともに関わらせて頂くことも多く、どこか故郷・新潟に空気感が似ている酒田が好きで、酒田出張を一つの楽しみにしていました。

さて、いきなりですが、実はこの6月で前職を辞め今は故郷である新潟県に10年ぶりにUターンしました。(酒田からも意外と近いですね)

今の私の仕事は、新潟を拠点として活動する教育NPOに在籍しながら、自身でも企画会社「Ideapartners」を立ち上げ代表を務めています。そんな私が伝えたいことは、私と同じくこれから地方へUIターンを検討している人が気になるであろうテーマ、「果たして、地域での生活は本当にやっていけるのか?」ということです。読者の皆さんの中にもUIターン経験者か、将来いつかは帰ってこようかなと思っている人も多いと思いますので、少しでも参考にして頂けると幸いです。

幸せのあり方は変わった

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・・・といきなり言われてもピンとこないと思いますが、20世紀の工業社会がもたらした日本の高度経済成長と、それまでの企業と働き方はご存知なのではないかと思います。そう、「年功序列」「終身雇用」「一生涯保障」を代表する旧来型の働き方です。今でこそワークライフバランスが叫ばれ、長時間労働をよしとしない風潮が高まっていますが、この時代の働き方は、長時間労働は当たり前で会社や上司の命令は絶対。その代わり賃金や生活保障があり、働いた分だけ暮らしは豊かになり、出世も約束されていました。この頃のサラリーマンの幸せは、高給取りとなりマイホームに良い車、家族に囲まれ贅沢な暮らしをするというのがほとんどだったのではないでしょうか。

しかし今はどうでしょう。1980年代、かつて企業の寿命は30年と言われていましたが、今や20年足らず。人の働く寿命の方が長くなり、企業は社員の生活の一生保障ができなくなりました。人口も減少の一途を辿り、国の社会保障も充てにはできません。
また、幸せな暮らしの「定義」も旧来型の価値観から多様化し、もはや「大企業や公務員で務めているから」「給料がいいから」では幸せを実現できない人も多くなってきました。成長社会から成熟社会へと移行した日本は、もはやお金で誰もがモチベートされる社会ではなくなってきているようにも見えます。

だからこそ、日本は幸せを図る指標を経済的・景気的な指標だけでなく他の指標も取り入れなければならないのではないでしょうか。

幸せの量:GNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)

国民総幸福量という言葉をご存知でしょうか。聞いたことがあるという方もいらっしゃると思いますが、ブータンの時の国王ジグミ・ドルジ・ウォンチュック陛下が唱えた指標です。
それまで経済学者の多くが幸福になるためには経済的な発展が不可欠であるという考え方が主流でした。しかし物資的な成長=幸福とは限らないと主張し、これまでの概念に対し国の発展の度合いを測るのにGDP(Gross Domestic Product/国内総生産)ではなく、GNH(Gross National Happiness/国民総幸福量)を使いはじめたのがブータンです。

そして2011年7月、国連で歴史的な決議が通過。国連加盟国に幸福度の調査を行い、結果を公共政策に活かすことを各国に呼びかける動きがありました。2012年4月にはブータン首相が議長を務める国連会合が実現し、世界幸福度報告書(World Happiness Report)を発表。世界的に幸福の総量という視点が認められることになりました。

その結果、日本は43位。
経済的な豊かさが必ずしも幸せではないということは、この結果を見なくても共感頂ける方も多いのではないでしょうか。

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出典:WORLD HAPPINESS REPORT 2013より

これからの、「地方の幸せのあり方」とは?

これまで画一的な幸せを会社中心に築かれてきた日本。会社から個人へ幸せの主導権が移り、働き方が多様化するだけでなく、幸せのあり方も個人の責任になってきています。これからの地方の暮らしを考えるあたり、先ほどの幸福量という本質的な考え方は参考になるはずです。では、物質的な成長を追わずして、いかに地方で幸せな暮らしを実現していけば良いのでしょうか。

私がUターンをするにあたり、その決断を下すきっかけとなった2つの考え方をご紹介します。

本業とは異なるもう一つのキャリアを築く:パラレルキャリア

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一つ目がパラレルキャリアです。
かの有名な経営学者ピーター・ドラッカーが提唱した新しい社会での生き方で、本業の仕事以外に仕事を持つことや、非営利活動に参加することを指します。最近取り上げられることも増えてきたパラレルキャリアですが、私は本職に何らか生かすことのできる経験を積める、個人活動や仕事と定義したいと思います。ここでいう仕事は「役割」を指します。副業とは何が違うのかというと、パラレルキャリアはお金を稼ぐことが一番の目的ではなく、自分がやりたいこと・興味のあることに関わることを一番の目的にしていること。そして、本職との何らかの関連性があるということが違いと考えます。

自分がやりたいことを仕事にできず諦めている人も少なくないかもしれません。特に選択肢の限られたなかで生きてきた方は、こうした活動を損得勘定で片付けてしまう方もいるでしょう。そうした方こそ、仕事をもちながらやりたいことに関わることで、ぐっと幸せに近づけるはずです。関わり方は習い事、地域コミュニティへ参加するなどどのような形でも良いと思います。本業の経験をもう一つのキャリアで生かし、パラレルキャリアで得られた経験も本業への糧となるような循環。本業の肩書や立場に関係なく、しがらみに囚われず個人として関われる場所を作ることで、質の高いつながりの量が増え、より充実した時間を過ごせるはずです。

私も前職の時には仕事の合間を縫ってまちづくり活動や学生の社会参画の支援などに参加していました。経験を生かして、石巻の地域の子どもたちへの進路支援などにも関わることで、自分が地域にとって何か役に立てることを知ることができたのは大きかったです。必ずしも本業の仕事で自分の存在価値を見い出す必要はない。こう感じられるだけで救われました。

家、職場ではない第三の居場所:サード・プレイス

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パラレルキャリアと一見似ていますが、異なるものがこのサード・プレイスです。パラレルキャリアは本業以外の違う一面を持つことを指し、それは必ずしも場所は問いません。しかしサード・プレイスはこの「場所」という考えが重要です。それは単純な場所というよりは、「居場所」や「拠り所」という方がよりニュアンスが近いです。特定の地域もそうですが、特定の人たちが集まるスポットもそうかもしれません。

仕事で失敗し、さらに家でも家族と上手くいかなくなった。そんな時皆さんはどうしますか。きっと多くの人が苦しみ、悩みますよね。サード・プレイスは、そのまま「第三の場所」という意味。会社の中の役割、家庭の中での役割など関係なく、あなたらしさをそのまま受け入れてくれる居場所。それがサード・プレイスの価値です。

ともすると都会と比べ閉鎖的であったり、近すぎるが故に難しさを感じることもある地方での生活。だからこそ、地域での生活で自分にとっての「サード・プレイス」をぜひつくってください。また、現代社会でサード・プレイスの必要性を説いた米国の社会学者レイ・オルデンバーグが定義するサード・プレイスは以下のような条件が必要とされています。

  • 無料あるいは安い場所である
  • 食事や飲料が提供されている
  • アクセスがしやすい、歩いていける
  • 習慣的に集まってくる
  • フレンドリーで心地良い雰囲気
  • 古い友人も新しい友人も見つかるようなところ

オルデンバーグは、サード・プレイスをコミュニティライフのアンカー(錨)と言える場所と言っています。余談ですが、どこにいっても大人気のコーヒーチェーン店「スターバックスコーヒー」は、その地域にとってのサード・プレイスになることを想定して出店しているのが成功の秘訣なのかもしれませんね。

私も仙台と山形を行き来する生活をしていた頃は、社外にいくつかこうしたサード・プレイスを持っていました。それによって仕事以外にその地域にいく目的ができますし、自分が何者であろうと受け入れてもらえる場所があることはとても心地よかったです。

自分らしさを生かせる役割と場所を見つける

自分らしさ生かして誰かの役に立てる仕事(役割)を複数持つ。そうした生き方を大事にする自分を受け入れてくれる場所がある。パラレルキャリアとサード・プレイスという考え方から私が学んだことは、どこでどんな仕事をしていようと、これらが実現できればきっと自分にとっての幸福の総量は増やし続けられるということです。
皆さんはこの2つの考え方をどう感じられましたか?

もしこのコラムを読んでくださっている方のなかで、地方での生活に充実感を感じられない方がいらっしゃれば、パラレルキャリアとサード・プレイスが見つかることを祈っています。「アンダーバー」はそうしたことを実現してくれる場所にもなっていると思いますので、ぜひ積極的に活用されてみてはいかがでしょうか。

私が立ち上げた企画会社「Ideapartners」は、地方における新しい働き方を提示することをめざしています。これから地方で活躍しようとする方たちが、一つのロールモデルとして参考にしてもらえるよう、本日お伝えしたことを誰よりも率先して実現していきたい思います。

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地方で自分に何ができるか分からないと思われている方。あなただからできる、あなたを活かすアイディアを一緒に考えます。悩まれている方はご一報ください。

Ideapartners 山本一輝
【メール】ikki1019@gmail.com
いかがでしたでしょうか?あなたらしさをそのまま受け入れてくれる「サード・プレイス」であり、自分が本当にやりたいことに関わる「パラレルキャリア」を実践できる場、それはまさに「かくありたい」とアンダーバーが求めている姿です。山本さんと話してみたいという方は上記連絡先まで、または、アンダーバーまで是非ご連絡ください。

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山本 一輝

「Ideapartners」代表。1986年生まれ。新潟県新潟市出身。 小学校でいじめに遭い、中学校で3年間不登校を経験。その後定時制高校を経て大学へ進学し、教育心理学を専攻。卒業後、飲食業界で働くも東日本大震災を仙台で被災し、転職を決意。リクルートへ入社後、4年半東北にて大学・専門学校の広報や組織活性の支援、高校にて進路講演の講師を務める。仕事の傍ら、プロボノとしてまちづくり活動、高校生や大学生のキャリア支援などに広く携わった。現在は教育支援NPO「みらいずwork」に参画し、自らも企画団体「Ideapartners」を立ち上げ代表を務める。公私問わずこれまでの経験を生かして、生きにくさを感じる若者への支援や高校生のキャリア教育、地域の新たな価値創造に邁進している。

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