田舎の人は、実は義理人情に厚くない?昔からあるムラ社会型のコワーキングとは何か。

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こんにちは、アンダーバープロモーター中村です。
「コワーキングスペース」という横文字はせいぜいここ10年以内の言葉ですが、そもそも「コワーキング」という概念自体はいつの時代でも存在していたものではないだろうか。今回そんな思いから、山形県鶴岡市の大鳥という山奥の集落で「マタギ見習い」やブログ「ひろろーぐ」での思索活動を展開する田口比呂貴さんに話を伺いました。それでは以下、集落にどっぷり浸かって生きる田口さんならではの「ムラ社会型コワーキング」ご一読ください。

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執筆者プロフィール
田口 比呂貴。1986年生まれ。29歳。法政大卒⇒電子部品メーカー営業2年⇒鶴岡市地域おこし協力隊⇒フリーランス。マタギ見習いとして大鳥地域で活動中。執筆・イベント企画運営・農作物販売・地域の仕事手伝い等をしながら暮らす。ひろろーぐ(ブログ):http://hirotaguchi.net/

はじめまして、僕、田口 比呂貴は山形県鶴岡市大鳥という人口80数人、高齢化率70%という超少子高齢化&超過疎地域で暮らしています。「山の暮らしを体現したい!」と意気込んで地域おこし協力隊として大鳥に飛び込んだのが3年前。都会でしか暮らしてこなかった僕にとって、ムラ社会の暮らしはかなり刺激的でした。いつも誰かに見られている感、根も葉もない噂が広まる…等々。

一方で、全戸参加で行事をしたり、おすそ分けを貰ったり。日常がまるで違いました。何がそんなに違うのか…という疑問を抱きながら、地域での原体験+民俗学を少しかじって、2016年4月に「大鳥の輪郭」という民俗誌を作りました。この本は、歴史・文化・生業・暮らしなど大鳥の地域のいろんな側面を詰め込んだ本なのですが、今回はその中から”共働”について少し紹介します。

共働その【1】 結(ゆい)

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今ではあまり聞かなくなったのですが、昔はどこの田舎でも結(ゆい)をしていました。結というのは効率を考えた”労働交換”のことで、「今日はあなたの田植えを手伝うから、明日はうちの田植えを手伝って。」といった労働の貸し借りのこと。僕も「おまえのとこの雪かき手伝うからうちのも手伝えっちゃ」といった具合に、結を何度か経験しました。感覚値ですが、互いの労働の貸し借りが±0になったから気持ちよく終われたと思う。

結を現代風すると例えば、「今日はあなたのWebプログラミングを手伝うから、明日は僕のHPデザインを手伝ってよ」という感じ。持ち合うスキルが互いの助けになり、労働が±0になるように配慮できるのであれば、一人でやるより二人で貸し借りするほうが楽しいし、はかどりそうですよね。

共働その【2】 共同作業

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共同作業とは共通の目的を持って一緒に作業することで、僕の地域では一軒につき一人、平等に出し合って集落周りの草刈り・ゴミ拾い、神社の掃除等をします。毎回早朝なのが少しツライですが、共同作業をすることで「自分たちの地域は自分たちで守る」という住民自治の根幹が脳に植え付けられている気がします。笑 

それと共同作業は、自分と地域の苦手な人とを繋ぎ止める役目もします。地域の人同士で陰口を叩き合うことが稀にあって、そんなん言うなら絶交すればいいのに…と思うのですが、そうはしない。恐らく、個人的には嫌いでも、「地域にとっては共同作業でも一人前に働くし必要な人なんだ」と心の中で折り合いをつけているのだと思います。苦手な人でも相手の働きを認め、付き合いだけは続けるというスタンスは、実社会でも案外大事なのかなと思います。

共働その【3】 恩と義理の売り合い

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「田舎の人はなんでこんなに良くしてくれるの?」と思ったことはありませんか?
晩御飯をご馳走になったり、作業を手伝ってもらったり…。沢山の恩を受け、”田舎の人はあったかい!”と言うのも無理はない。けど、少し誤解があると思います。
田舎では身の回りの自然を利用して、農耕や狩猟・採集を行ってきました。けれど、自然はいつも人間の都合の良いようにはできていない。大雨で田畑が浸水するし、雪の重みで家が崩壊することもある。そうした災害を受けると、元の暮らしに戻すのに平常時の何倍もの労力が必要となる。だから、いざという時に地域の人たちから助けてもらえるよう、日頃から恩や義理を売り合うことが不可欠でした。田舎に住む高齢者世代にはこの名残が残っていて、異常なくらい優しくしてくれるという側面もあると思います。

3つめは共働から少し外れましたが、義理人情が深いと称されがちな地域も、違う側面から見ると、その合理性に気が付けます。地域コミュニティーとか、コワーキングとか。流行りの言葉は色々ありますが、誰かと何かをする…という時にミソとなる部分は、地域で行われてきたことと案外似ているんじゃないかなって思います。

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山形県鶴岡市大鳥集落の風景

いかがでしたか?
「苦手な人でも相手の働きを認め、付き合いを続ける」「日頃から恩や義理を売り合う」「互いの労働の貸し借り」など、今の時代にプロジェクトを遂行していく上でも大切な精神が語られていたと思います。地域との繋がりが薄くなっているといわれる現代ですが、大都市ではなくなってしまった「昔ながらの共働とその精神文化」がここ庄内には残っています。そんな庄内だからこそできる地域づくりをコワーキングスペースUNDERBARという場でも模索していきたいですね。

■writer's profile

Hiroki Taguchi

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田口 比呂貴

田口 比呂貴。1986年生まれ。29歳。法政大卒⇒電子部品メーカー営業2年⇒鶴岡市地域おこし協力隊⇒フリーランス。マタギ見習いとして大鳥地域で活動中。執筆・イベント企画運営・農作物販売・地域の仕事手伝い等をしながら暮らす。ひろろーぐ(ブログ):http://hirotaguchi.net

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