日本中のコワーキングスペースを旅したら、「働き方の今と未来」が見えてきた。

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12月22日(木)にアンダーバーで「コワーキングスペースの役割と立ち上げ方」と題するイベントが開かれた。スピーカーは日本中のコワーキングスペース50箇所以上を2016年の間に回った伊藤さん。見えてきた「働き方の今と未来」とは?当日のイベントの模様とともにご一読ください。

コワーキングツアー

スピーカーとして登壇したのは、2010年に日本初となるコワーキングスペース「カフーツ」を神戸で開設した伊藤富雄さん。ときおり混じる関西弁が小気味よい、話好きの男性だ。

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イベントのタイトルにもあるが、伊藤さんは「コワーキングスペースの役割って何だろう?」「フリーランスの人の仕事場であり、コミュニティでもある。でもそれだけじゃないはず!」そんな好奇心から今年、全国の施設を訪ね、運営者に話を聞く”コワーキングツアー”を始めた。

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(写真:伊藤富雄氏)

” 3月から福岡・愛媛・香川・徳島・福島・広島・熊本・長野・千葉・滋賀・石川、今月山形で51軒目。来年も続けて100軒回ろうと思います。行く先々で自分でも思ってなかったような、地方のコワーキングの今が見えてくる。中でもこれはすごいなと思った事例をまずは紹介しますね。

ツアーでインタビューした内容を記事にまとめ、トイロハ(https://toiroha.jp/)というサイトに寄稿している。そちらも引用しながらレポートしていきたい。

街全体がコワーキング

1つ目は福岡県小倉にあるその名も「秘密基地」。ここでは”集めて 混ぜて 繋げて 尖らせる”というユニークなスローガンが共有されている。

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(写真:伊藤富雄氏)

” 最初からコワーキングスペースがどうこうという発想じゃない。街のために何ができるかを考えている人たちがわいわいやってきてる。若い人や年配の方も、職種もITだけでなくて飲食、大学の教授、船長、ありとあらゆる方が様々な目的でやって来ます。ネイルサロンとかアイフォンの修理とかもここでしてますよ。ローカルにいる人たちの教養の場所としてできあがっている。 ”
” 「秘密基地」では、実に多くのプロジェクトが同時多発的に起ち上がり進行している。それは、異業種間でのコラボであったり、ローカルフードのフェスティバルであったり、あるいは、地元の起業家を地元の人たちで支援するローカルクラウドファンディングであったり、または事業家育成のための塾であったりと、実に多彩だ。そして、そのプロセスを都市空間に広げて理解すると、実は街自体がそもそも多様性を持つものであり、コワーキングであることに気づく。
(引用: https://toiroha.jp/article/detail/53261)

子を持つ女性のベースキャンプ

次に取り上げたのは長野県のコワーキングスペース「HANALAB(ハナラボ)」。県内で3か所のスペースを展開しており、いずれも異なった特徴をもつ。その中の一つ、”活躍する女性の育成”をコンセプトに掲げるのがHANALAB.UNNO(ウンノ)。託児所やキッチンスタジオが併設されたユニークな造りだ。

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(写真:伊藤富雄氏)

小さい子供がいる若いお母さんがまた職場に復帰できるように、職業訓練を行っている。ウェブデザインやライティング業務を東京から受注して、お母さんたちに仕事をしてもらう。スキルを身に付けてから地元の企業に就職してもらうと。労働力を直接的に地元に作っていく。学ぶべき点は多い。 ”

女性の人材育成に取り組むことで、地元企業や街全体を元気にしていく狙いがある。

” こうなってくると、コワーキングという概念が無限の広がりを持つようになってくるが、そもそもコワーキングは地域に根ざすコミュニティであるので、そこに暮らす人たちの生活を豊かにするプログラムなら何を動かしてもいい。
(引用: https://toiroha.jp/article/detail/65423)

運営者が切り拓く新しい働き方

最後に登場したのは、長野県の自然豊かな高原に位置する「富士見 森のオフィス」。辺りは日本アルプスを見渡す絶好のロケーション。運営するのは現役の大手電機メーカー社員。週の半分を東京で働き、残り半分を長野で家族と暮らしながら森のオフィスを管理している。数年前に八ヶ岳へキャンプにやって来たとき、景色の美しさに魅了されて移住を決意。会社との調整を乗り越えてダブルワークを実現させたという。施設内には県外に本拠を置く様々な会社のサテライトオフィスが入居し、都会から来た社員が快適に働いている。

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(写真:伊藤富雄氏)

自分の事業もやっていいですよ、というふうに社会が変わってきている。コワーキングスペースを立ち上げたい方も、いくつかのプロジェクトを掛け持ちしながらできると思うんですよ。僕も4つくら仕事やってますが、それは誰でもできる。ダブルワークでもトリプルワークでもかまわない。 ”
” いろいろな人がいろいろな想いでいろいろなコワーキングを動かす。そしてそこにまた人が集まりスパークを起こす。ダブルワークでこそ実現する未来もあるはずだ。 ”
(引用: https://toiroha.jp/article/detail/68023)

コワーキングスペースとゲストハウスは似た者同士

個性的な3つのコワーキングスペースの紹介を聞き終えたところで、参加者から質問の声があがった。「コンセプトを打ち出していくことが大事ですよね。ただスペースにどう人を集めるのか、何かいい方策はありますか?」
伊藤さんは「あまりに唐突に思われるかもしれませんが・・・」と前置きしたうえで語った。

一つの方法として、「COWORKATION」がイケてると思うんです。CoworkとVacationの造語で、仕事と休暇をセットにしてみませんかということ。コワーキングスペースはややもすると仕事ばっかりになってしまう。やっぱりリフレッシュしたいし、家族サービスもしないといけない。ヨーロッパやアメリカではとても人気があります。 ”

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(画像:http://zondaghouse.com/)

徳島県にあるゲストハウスと協力し、来年から外国人向けにコワーケーションを始める予定だという。準備中のウェブサイトでは、ワークスペースや古民家を改装した宿泊施設、食事、アクティヴィティーなどを一体的に提案。欧米や東南アジアのコワーケーションは多くがリゾート型で豪華なジャグジーやクルーザーを楽しむが、徳島では料金を安く抑え、代わりに地域で日本独自の文化を体験してもらう。座禅、写経、着付け、蕎麦打ちなどが喜ばれると話す。

各国から人が集まってきて、みんなで寝泊まりして、こたつに入って日本食を食べて、仲良くなるじゃないですか。それが彼らの目的の一つでもある。これも体験の一つなんですよ。そして、これってコワーキングと一緒なんです。ゲストハウスはコワーキングスペースと親和性が高い。ゲストハウスの中にワークスペースを作れなくても、どこか近隣と提携してもいい。 ”

コワーケーションは人を集める方策の一つでもあり、先ほど聞いた個性的な3つの事例と同じように、コワーキングスペースの多様なコンセプトの中の一つでもあるのだろう。

結局コワーキングスペースの役割って?

トークの終盤で、地方にコワーキングスペースがあることの意義をこう語った。

” 地方都市にこそこれから先、単なる箱ではなくて、ローカル経済を駆動するエンジンが必要だと思ってます。ここに集まる人たちがお互いを補完し合って、ローカルでいろんな活動を起こしていく、一つの拠点になる。 ”

伊藤さんが富士見 森のオフィスについて書いた記事の中にも、ヒントとなる言葉が隠されている。

” このリポートはコワーキングがテーマだが、そこに映し出される人間模様には、毎度、驚かされる。以前から、「コワーキングは場所ではない、人だ」とくどいように書いているが、その「人」それぞれがさまざまなストーリーを持ち合わせている。それらがミックスされてひとつのコワーキングが醸成される。人の物語のないコワーキングというものは、存在しない。 ”
(引用: https://toiroha.jp/article/detail/68023)

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(写真:伊藤富雄氏)

思うにコワーキングスペースの役割とは、人が「こんなふうに仕事をしたい」「こう暮らしていきたい」という姿を実現していくための場所といえるのではないだろうか。「街のためにできることをガムシャラに挑戦したい」「女性が活躍する仕組みをつくりたい」「東京と田舎でダブルワークをしながら、自然に囲まれた環境で子育てをしたい」というふうに。いろいろな思いを持った人たちがスペースを立ち上げ、その空間に共感した人たちが集まり、相互に影響しながらだんだんと”成っていく”。多様なコワーキングスペースのあり方は、多様な人たちの成りたい姿のあらわれでもある。

各地にできあがる個性的なコワーキングスペース。伊藤さんはそれを喜びつつも、さらにその先に夢を描く。

” 各地にあるスペースが点のままで、つながってないのがもったいない。地方のコワーキングが連携して何か「こと」を起こすような、起爆する場所として機能するはずです。まずは日本中のコワーキングをつなぐ。次に日本中のコワーカーをつなぐ。彼ら彼女らがフラットにつながり、一つの仕事をチームとして行い、成果を上げて収益を相応に分配することが理想的。 ”

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地方にいながら日本や世界のコワーカーとつながり、ともに働くことができる。世界中を旅するように働くこともできる。そんなワクワクするような未来がやってくるかもしれない。

自分自身なら?

最後に、自分自身ならコワーキングスペースにどんな役割を望むだろうかと考える。オープンかつフラットであることは確かに価値があるけれど、例えば反対に”人を選ぶ”ような場所があっても面白い。古民家を隠れ家のようにリノベーションした空間に、思いおもいの調度品や仕事道具があふれる。利用は招待制で”一緒に働きたい”と感じる人だけ12,3名。やる気や刺激、知見、スキルを与え合う。ときには互いの仕事について夜遅くまで議論を交わすことも。メンバーの取り組んでいるプロジェクトは全員が共有し、他者の成功は自分のことのように喜び合う。ビジネスとしては成立しないだろうけれど、有志で実現できれば楽しそうだ。

さて皆さんは、どんなコワーキングスペースが欲しい(=どう働き、どう暮らしたい)と感じただろうか。

■writer's profile

Hiroki Araki

Hiroki Araki

荒木 洋樹

アンダーバー「朝の顔」。コンシェルジュとして平日午前に勤務する。また東京ドーム4個分の広大な遊休地を借り受け、一つの街に変える「カルチャーシティ計画(仮)」ディレクターを務める。

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